「東日本大震災とこころへの影響」PTSD
人は、大災害・事故・戦争・事件等により、心に重い傷を負うことがあり、それが3ヶ月から半年たっても、癒えず、後々まで尾を引くことがあります。
これを「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)と呼びます。
近年「阪神淡路大震災」や「地下鉄サリン事件」などでよく知られるようになってきました。
被災地で今後懸念されるこの件について、
高塚雄介氏(日本精神衛生学会理事長・明星大学大学院人文学研究科長)
をお迎えし、
北海道家庭生活総合カウンセリングセンター主催の講演会が開かれました。
まず結論です。
この問題は9月以降に問題になってくることが予想されます。
このことについて説明させていただきます。
まず、災害により、心が大きく揺さぶられます。そのため普段とは異なる精神状態と様々な変化が起こります。
それが3つの段階に分けられます。
第一次段階(被災直後)
高揚した気分に襲われます。普段おとなしい人がじょう舌になったり、活発に動き回るなどの行動が起きます。
これは火事場のバカぢからみたいなもので、2~3日位で鎮まります。
第二次段階(被災後2~3日後以降)
高揚した気分は消失し、
①喪失感=大事な人や物を失い、辛さ・悲しみがおこり、否認・怒り・悲憤の感情が交錯します。
②脱力感=なにをするにもおっくうになり、無気力になります。
③不安感=再び被災するのでは?、将来の不安で眠れない状態が続きます。
④興奮=突然興奮し、怒りや大声や泣き出したりします。
⑤身体症状=頻尿・おねしょ・失禁が多く見られます。
これが3~6ヶ月間続き、次第に落ち着きを取り戻していきます。
しかしその後、次の第三次段階に進むと、PTSDと認識し医療的ケアが必要になります。
ほとんどの方が第二次段階から治っていくのですが、1割くらいの方が次の段階に入ってしまうらしいのです。
第三次段階(被災後3~6ヶ月以降)
①眠れない、又は浅い。
②食欲の変化(過食・拒食)
③持続的な不安や恐怖感
④その出来事が繰り返し思い出される。
⑤夢でうなされる。
⑥ピリピリし、周囲の動きに敏感になる。
⑦被災前後の細かいことが思い出せない。
⑧うつうつした気分がとれない。
⑨悲しい気分が続く。
⑩涙もろくなる。絶望しやすい気分が襲う。
⑪いらいらし、怒りっぽくなる。
⑫気分が散漫になり集中できない。
⑬感情が鈍磨し、引っ込み思案になる。
⑭他社と気持ちが通じ合わない気がする。
⑮愛する者への過度の心配がつきまとう。
⑯心的外傷体験に関わる話題・人・場を避ける。
⑰頻尿・失禁が続く。
⑱寝汗・腹痛・下痢
被災後6ヶ月で第三次段階に入るとPTSD、
つまり9月以降にこの問題が出てきます。
この心の問題の対策を構築しておかなければならない。
キーワードは
「人を支えるのは、人しかいない」ということです。
人間関係が最重要で、支えてくれる人がいるとPTSDになりにくい。
統計でも、下町でご近所づきあいのある地域では発症率が低いらしいのです。
では、我々北海道家庭生活総合カウンセリングセンターのカウンセラーはどのような行動をとるべきか。
高塚氏いわく
「組織をつくり、組織として動き、現地の関係組織と連携して、行動をとる。やみくもに行動しない。
そのためにまずは現地の関係機関に打診する。
カウンセラーとしては、傾聴ボランティアなどが良いのではないか」
ということでした。
先週、仙台に行ってきました。
少しずつ瓦礫や車が撤去され、物質的には整いつつあります。
しかし、
本当の被災地支援は、これからだと、改めて実感しました。